2012年8月22日の午後、僕はストックホルムからロンドンのヒースロー空港へ飛んだ。その日、遠い昔から僕が夢見た、アフリカへの調査旅行へ行く日が遂にやって来た。長年思い描いて来た夢が叶う瞬間と言うのは、不思議な気持ちです。ゴールに辿り着いた達成感と、これまで自分の鋳型として目指して来た偉人達と同じように自分がなれるかどうかの不安、これが同時に来るのだ。今回の調査にはアフリカでの調査経験のあるポスドクのAlexander Kotrschalが様々な手配をしてくれたとは言え、十分に準備できているか不安があった。空輸出来ない化学薬品を現地で調達する予定だったが、それが本当に現地にあるかも確定できないままスウェーデンを発った。こんなことで採集が捗るのかと、考えれば不安に思う事はいくらでもあった。しかし、最近細かい事をくよくよ考えないことにしている僕は、ロンドンからザンビアの首都ルサカに向かう飛行機の中で、横にアメリカンサイズの黒人女性がドッサリ座った事も露気にせず、買ったばかりの防水デジカメをいじりながらわくわくしていた。
そんなことを思いながら、ふと通路側を向くと、例の黒人女性が二の腕を僕の席へ完全にハミ出した状態で熟睡していた。俺は、トイレに少し行きたいのを我慢して、その二の腕をまくら代わりにして寝ることにした。
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